エジプト王の黄金と青い宝石
古代エジプトの宝飾品
クレタ島のクノッソスの遺跡で代表される5,000年前のミノア文明と同じころ、エジプトでは統一された王のもと、大規模な国が存在していました。 現代人の私にもわかりやすい、繊細なミノア文明に比べると、エジプト文明の遺跡はあまりにも大きな建造物が特徴です。神殿やピラミッド、王家の墓や壁画など、その規模は私の想像を絶するものでした。
遺跡の偉大さも興味がありますが、私の注目はやはり残された宝飾品類です。 たとえば、ツタンカーメンの副葬品を見てわかるように、その技術の高さや豪華さ・・・それはとてつもない存在感です。
カイロの考古学博物館では、ツタンカーメンの部屋が最も人気があります。その博物館の中のさらに管理された特別室は、照明が一段と暗く、まるでお墓の中にいるようです。照明が暗いのは宝石などの自然な素材を光の劣化から守るためなのでしょうか。 その部屋で私たちは幸運にも、何千年も盗掘されることなく完全な形で発掘された品々を見ることができます。
調度品から装飾品まで、何から何まで黄金で輝いています。特にだれもが知っている有名な黄金のマスク。鮮やかな彩りがエジプトらしく、独特の美観があります。数千年昔であっても、金を扱う技術の素晴らしさが伝わり、重々しい王の姿が表現されています。
ツタンカーメン
表面には、遠くアフガニスタンなどから運ばれたラピスラズリやトルコ石が細かにはめ込まれています。全体では豪華な色彩が特徴で、観る人を飽きさせません。素材の黄金は、純金に近い金で、赤味は少なく、緑がかった山吹色そのものです。
首飾りや王冠、指輪、耳飾りなど・・・。様々な宝飾品が、金や銀とともに、ラピスラズリやトルコ石、赤褐色のカーネリアン、多彩な色を持つガラスなどを使って作られていました。 たとえば写真2の胸飾りでは、古代エジプト人が太陽神の象徴としたスカラベ(黄金虫)がラピスラズリで彫刻されたり、スカラベが転がす太陽がカーネリアンで磨かれています。 写真3のイヤリングではビーズの数々が様々な宝石で削られています。
若くして亡くなったツタンカーメン王は王家の谷の小さめの墓に葬られました。その王でさえこれだけの副葬品があったわけですから、何百メートルの巨大な地下の墓を持つ王や、永遠に続くほどの歴史壁画に守られる王や、巨大なピラミッドや神殿を遺した王たちの墓であったなら、その埋葬品はどれほどの規模のものだったのか想像もできません。
写真のように、その規模にビックリの神殿は王の葬式のためだけに作ったし、ピラミッドは、王が天へ上る階段として作ったとさえ言われているのですから‥‥、どんな宝石類で王や王妃は飾られていたのでしょうか。 古代の職人たちの宝飾技術と王たちの宝石へのこだわりについて、現代の私たちはピラミッドの前で、ただただ、想像してみるほかはありません。