ヨーロッパの有名メゾンから信頼され続ける素材と研磨のプロフェッショナル、フランス・ダロウ社の物語。
「ダロウ社」はスイスジュネーブに近く 山を二つ超えたフランス南東部セプトモンセルの山間部に存在します。
ダロウ家兄弟が1917年(大正4年)に創業した105年の歴史を持つダロウ社はなぜこんな山間部に存在しながら世界のブランドから信頼を得ているのでしょうか。
ファッションだけではない
フランス文化を支えるジェム「ダロウ・ストーン」
有史以来の天然宝石と人類とのかかわりの中で、中世から科学の発展に伴って憧れの宝石を人間の手で作り出そうとする挑戦が始まりました。1800年代の宝石は美しさや希少性、価格に対する憧れは勿論ですが、鉱物の特性、「強い色、高い屈折率、異常な硬度」は鉱物の「成分」と「結晶」という特性が持っている科学的な特性であり、古代から人類はその特性を生かして役立ててきました。
宝石の王様であったルビーの持つ憧れと科学特性は1800年代当時もっとも価値ある特性として注目され、合成研究はフランスやスイスの科学者がその中心になっていました。
1890年~1907年フランス人科学者のフレミーは合成技術ベルヌイ法を開発、初めて合成石コランダムの製造に成功しました。天然ルビーやサファイヤと全く同じ成分と結晶化をそのままに実現させたことになります。
以後フランスは合成技術の最先端を担い、様々な分野で必要とされる純粋な結晶を提供しています。
フランス人ダロウ家の2人の兄弟は、当時最先端の合成技術を生かして、1917年(大正4年)合成コランダムの製造と精密研磨の工場を創立し、105年前から DALLOZ FRARES,SA(ダロウ兄弟社)として世界の先進技術の要望する精密石材の注文に対応して各社の発展に貢献してきました。
「ダロウ社」はヨーロッパアルプスが連なる地方、有名なモンブランで知られるフランス南東部セプトモンセルの山間部に位置しています。
工場はリヨンからは100キロ、スイスの都市ジュネーブは直線で20キロですから、フランスとスイスの国境に位置しています。
この地の資源は自然環境そのものです。
豊富な水の力は安定的でクリーンな電力を提供してくれます。
大量の水は合成過程で発生するガスを電解し環境を守る力になります。
不純物の少ない水は精密な研磨を仕上げる重要な資源になっています。
この地の特性を生かしたダロウ社の活動は
スイスの有名時計と特注部品に対応し、パリのメゾンに研磨済み宝石ジュエリーに対して様々な製品を供給してきました。
スイスは誰もが知る機械時計の世界的生産地、、内部に研磨したルビーを使った軸は高級時計の不可欠なパーツであり、メーカーは初期の7石使いから21石使いの高級品となり、最高は約124石使いの競争にまで発展しました。また時計を守る風防ガラスは、強くて傷のつかない「無色透明の合成サファイヤ結晶」を研磨したサファイヤガラスが高級時計のステータスなりました。現在これらの精密な部品は各ブランドの独自のデザインと設計に正確なオリジナル部品として不可欠なものとなっています。
パリのメゾンが必要とする宝石もデザインと品質の高度なオリジナル性は不可欠であり、ブランドの信頼性となっています。選ばれる原石、美しいカットは各メゾンを象徴するものでありブランドの誇りです。
現代ではダロウ社のストーン技術は、結晶科学の応用が不可欠となっている、航空宇宙、情報通信、医療、防衛、精密機器に必要な高度な製品を安定的に供給しています。余談ですが「ピュアなアルミ粉末を作る技術」は誰もが知っている高級ブランド化粧品の原料として安全性に大きく貢献しています。
製造現場の要望に応えるオリジナル性の高い材料を開発し、高度なレベルで供給するのはダロウ社の105年の信頼技術であり、合わせて環境問題、雇用労働に取り組む姿勢は世界の取引先の信頼を得ています。
ダロウ社の生産活動は高度な技術力を必要としていることから、携わるプロフェッショナルの集団として、世界に約1200人の協力者を抱えています。